吸着式冷凍・吸着式ヒートポンプ(吸着ヒートポンプ)

 

熱・電ハイブリッド吸着式ヒートポンプの開発

吸着式ヒートポンプ(AHP)は活性炭,シリカゲル,ゼオライトなどの吸着材と水蒸気やアンモニアなどの作動媒体の吸・脱着により熱エネルギーを変換する機器です.AHPは373K 程度以下の熱エネルギーが利用可能で,特に水蒸気を作動媒体とするAHP は環境調和型熱エネルギー機器として,エネルギー資源・環境の問題の最有力候補技術に位置づけられています.AHPはFig.1に示す様に,一般的に一対の吸着器,蒸発器,凝縮器から構成され,各器間は蒸気バルブと熱交換流体が流れる流路,ポンプ,バルブと連結されています.吸着器内には吸着材が充填されており,吸着材が吸着質(冷媒)を吸・脱着する際に生じる発熱・吸熱反応を利用して冷熱・温熱を発生させるシステムです.

Fig.1 吸着式ヒートポンプ概略図

Fig.1 吸着式ヒートポンプ概略図

しかし,AHPは①既に普及している吸収式冷凍機と比較して2倍以上程度と大きい,②成績係数(COP)が他の冷凍機より低いといった課題があります.

本研究室では,これらの課題を解決するために,AHPに断熱圧縮機であるメカニカルブースターポンプ(MBP)を付加した熱・電ハイブリッド吸着式ヒートポンプ(熱・電ハイブリッドAHP)を提案しています.MBPはAHPの吸着器・蒸発器間および吸着器・凝縮器間に付加します. Fig.2 にハイブリッド化効果の一例としてシリカゲル/水蒸気の吸着等温線とAHPおよび熱・電ハイブリッドAHPの吸・脱着操作範囲を示します.AHPを相対圧φ1とφ2の範囲で稼動させた場合,得られる吸着量差はΔqですが,熱・電ハイブリッドAHP ではMBPによって吸着および脱着過程でそれぞれ吸着質蒸気を吸着材に加圧吸着および吸着材から減圧脱着させることができます.これによりAHP の操作相対圧範囲の拡大につながり(脱着:φ1→φ1’,吸着:φ2→φ2’),得られる吸着量差を大きくできます(脱着:Δqdes,吸着:Δqads).その結果,吸着材が有効利用され,吸着器の小型化およびCOP の増大が期待できます.

Fig. 2 熱・電ハイブリッド吸着式ヒートポンプの操作範囲

Fig. 2 熱・電ハイブリッド吸着式ヒートポンプの操作範囲

 

高性能デシカント空調機の開発

100℃以下の熱源を用いる調湿ならびに空調機能を有する吸着式デシカント空調機は,低温熱エネルギーの有効利用が可能な機器の一つとして着目されています.

デシカント空調プロセスは主にFig.3のように構成されており,デシカントローターに用いられる吸着材により,除湿を行います.デシカント空調の調湿性能は吸着材の吸着特性,吸・脱着速度等に支配されます.この中で脱着速度は,一般的なデシカント空調機には排熱供給もしくはヒーターによる間接加熱方式が採用されるため脱着速度が遅く,出力確保のために装置が大型化してしまう問題があります.

Fig.3 デシカント空調機の概略図

Fig.3 デシカント空調機の概略図

本研究室では,脱着過程にマイクロ波を導入した熱・マイクロ波照射ハイブリッド空調機を提案しています.マイクロ波加熱は電磁波による加熱方式のため①被加熱物質に対する直接かつ迅速加熱が可能,②他の被加熱物質にくらべて水の誘電損失係数が大きく,水を選択的に加熱できるといった特徴があります.そのため,脱着率や脱着速度の向上が期待でき,補助熱源としてマイクロ波を利用するデシカント空調機では供給エネルギー源の低減,ならびに装置のコンパクト化が可能につながるとかんがえています.

2015-03-21